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この光の輪、真ん中の銀河のものではない

Euclidが見つけたアインシュタインリング。1枚の画像に、遠近の違う2つの銀河が重なっている。

宇宙・科学 | 約4分 | 2026年10月8日確認

中心の白い光と、その周りを囲む細い輪。一つの天体に見えるが、光の出発点は別の銀河だ。

輪の正体は、もっと奥にある銀河の光。手前の銀河の重力に曲げられ、引き伸ばされて届いている。 宇宙望遠鏡Euclid(ユークリッド)が捉えた「アインシュタインリング」である。ESAの画像解説

中心の明るい銀河核の周りに、4か所が明るくなった細い光の輪が見える。EuclidによるNGC 6505の観測画像。
観測画像:NGC 6505の中心部。中央の明るい部分は手前の銀河、周囲の輪は背景銀河の像。画像はESAが公開した処理済み観測画像で、想像図ではない。画像の出典・クレジットは末尾に記載。 · ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by J.-C. Cuillandre, G. Anselmi, T. Li · CC BY-SA 3.0 IGO · None; display scaling only · ESA · CC BY-SA 3.0 IGO

観測画像:NGC 6505の中心部。中央の明るい部分は手前の銀河、周囲の輪は背景銀河の像。画像はESAが公開した処理済み観測画像で、想像図ではない。画像の出典・クレジットは末尾に記載。

手前は約5億9000万光年、奥は約44億2000万光年

手前にあるのは、NGC 6505という銀河。地球からの距離は約5億9000万光年。輪になって見える背景銀河は、ESAの説明では約44億2000万光年先にある。画面では隣り合っていても、宇宙では大きく離れている。

NGC 6505自体は、1884年から知られていた。それでも、この輪は長く見つかっていなかった。2023年9月、Euclidの試験観測で、研究者Bruno Altieriが最初の手がかりに気づいた。意図的にピントを外した画像が入口となり、その後の観測で輪の姿が確かめられた。発表は2025年2月10日だ。ESAの発表

「新しく現れた輪」ではなく、観測によって初めて見つかった輪。既知の銀河にも、まだ見えていない景色があった。

なぜ、奥の銀河が丸く見えるのか

大きな質量を持つ天体は、周囲の時空をゆがめる。その近くを通る光の道筋も曲がる。ガラスのレンズがなくても、銀河が遠くの天体の像を変える。これが重力レンズだ。

奥の銀河から来る光は、手前の銀河の異なる側を通って、こちらに届く。その結果、同じ天体が複数の位置に見えたり、像が弧のように伸びたりする。NASAによる仕組みの解説

背景銀河・手前の銀河・観測者の位置関係がうまくそろうと、伸びた像が輪になる。位置関係やレンズとなる質量の分布が違えば、弧や分かれた像にもなる。どんな銀河でも、後ろに別の銀河があれば輪ができるわけではない。NASAによるリングの解説

奥の銀河の光が手前の銀河の両側を通って曲がり、観測者に届く仕組みを示した概念図。距離や曲がり方は実際の縮尺ではない。
オリジナル概念図。光の経路を2本だけ描いた説明用の図で、観測画像や数値シミュレーションではない。 · 本稿のために制作したオリジナル説明図
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奥の銀河の光が手前の銀河の両側を通って曲がり、観測者に届く仕組みを示した概念図。距離や曲がり方は実際の縮尺ではない。
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オリジナル概念図。光の経路を2本だけ描いた説明用の図で、観測画像や数値シミュレーションではない。

写真をもう一度見ると、輪の明るさは一様ではなく、4か所に明るい部分がある。輪そのものも、定規で描いたように均一ではない。遠い銀河を重力越しに見た、その細部まで写っている。

輪は、銀河の「重さ」を調べる手がかりになる

重力レンズの面白さは、景色を変えるだけでは終わらない。光がどれだけ曲げられたかを調べれば、曲げた側の質量を推定できる。

明るさから分かるのは主に光を出す物質だが、重力には光を出さない物質も関わる。レンズ効果は、見えない物質を含めて質量を調べる方法になる。NASAによるダークマターとレンズの解説

NGC 6505の研究では、輪の画像だけでなく、光を波長ごとに分けた「スペクトル」も使った。背景銀河と手前の銀河を区別し、星の運動の情報も組み合わせて、質量のモデルを検討している。

論文が示した輪の内側の質量は、太陽およそ1530億個分。これは空の上で輪に囲まれた範囲に、視線方向の物質を重ねて数えた値だ。銀河全体の質量ではないし、写真の明るい点を数えた数字でもない。観測データを重力レンズのモデルで解釈して得られた推定である。研究論文・第3節

写っているものと、読み解いたもの

この画像で実際に観測されたのは、天体から届いた光の分布だ。その形と、別に測ったスペクトルを組み合わせることで、遠近の異なる銀河が重なった重力レンズとして理解できる。

そこから先の「どこにどれだけ質量があるか」は、モデルで読み解く段階になる。研究チームの所属機関も、画像を精密に再現するモデルを使って分析したと説明している。きれいな輪を撮れたことと、ダークマターの正体が分かったことは同じではない。マックス・プランク協会の解説

もう一度、中央と輪を見比べてみよう。中央の銀河は、それ自身の光を見せると同時に、奥の銀河の見え方も変えている。

遠くを見るための望遠鏡は、地球の近くにだけあるわけではない。宇宙の途中にある銀河も、光の進路を変える巨大なレンズとして働いている。

出典と画像

本文のリンクは、研究論文とESA・NASA・研究機関の一次資料。この記事は2025年2月に公表された発見を解説したもので、2026年の新発見を報じる記事ではありません。距離はESAの一般向け公表値を使用しています。